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ブアカーオがナーイ・カノムトムになった日(4) [ブアカーオ]

決勝戦の相手アンディー・サワーは若干22歳でヨーロッパ5冠に輝き、昨年のK-1 MAXでブアカーオを再延長の末破り優勝したシュート・ボクシングの天才。今回のトーナメントでは一回戦でカラコダにダウンを奪われながらも逆転のTKO勝利、二回戦では「過去最高のコンディションでやばいほど強い俺様」を自称する魔娑斗からダウンを奪い、その非凡な才能を見せ付け勝ち上がってきた。

去年のサワーvsブアカーオは試合前から明らかにサワーが有利であった。去年のサワーは一回戦も二回戦も明らかに格下の日本人選手が相手、しかも両方手負いの相手であった。クラウス戦で激しい打ち合いをしたブアカーオとは決勝に進むまでのダメージ蓄積量が違う。そのようなハンデのある状況にもかかわらず、試合内容はほぼ互角。再延長の末の判定は2-1のスプリットであったことを考えると、去年の「蹴りだけブアカーオ」でも十分サワー以上の実力があったと推測される。

しかし今年は状況が逆転している。無傷で決勝にあがってきたブアカーオに対してサワーは満身創痍。おまけにブアカーオにはザンビディス級のハード・パンチがある。コンディション、実力、気合、どの面から見てもブアカーオに負ける要素が見つからない。この時点ですでに結果は見えていた。

1R、体力が無くなる前にラッシュをかけて試合を終わらせたいサワーに対して、ブアカーオは焦らず様子を見る展開。近距離からの高速コンビネーション・パンチを浴びせるも、もはや一回戦・二回戦のような威力はなく、ブアカーオには効かない。一方のブアカーオは近づけばパンチ、離れれば左右のミドル・キックで確実にダメージを与える。両者決定的なポイントなく、3分間が終了する。

2Rで試合が動いた。パンチとキックのコンビネーションが激しさを増すブアカーオに対して、サワーの手数は減る一方。両者が接近してホールドとなった直後、ブレークを求めて審判のほうを向いたサワーの顔面にブアカーオの左フックが突き刺さる。棒切れのようにマットに倒れこむサワー。ブアカーオの隆々とした上腕筋、三角筋、広背筋から繰り出されるパンチはサワーや魔娑斗のような速度や回転力はないものの、当たったときの衝撃力が桁外れだ。それは一回戦の佐藤の倒れ方、二回戦のドラゴの倒れ方を見ても明らかだ。サワーや魔娑斗のようなフラッシュ・ダウンを奪うパンチではなく、空手の正拳突きのように一撃で相手の息の根を止める類のパンチである。ちなみにブアカーオのパンチを正面から食らった佐藤は鼻を骨折したという。

こうなると試合はワンサイド・ゲームとなる。ブアカーオのワンマンショーが始まる。ミドル→パンチ→ミドルの連続波状攻撃、そしてとどめのアッパーで2回目のダウン、最後は右ストレートでノックアウト。

勝利を伝えるゴングが打ち鳴らされた直後、コーナーに駆け上がるブアカーオ。リングに乱入しブアカーオを抱き上げるトレーナーのジュート氏。そして礼節を重んじるタイ人らしく、所属ジム会長のプラムック氏の足元にひざまずくブアカーオ。すべてのシーンが感動的だ。この日のこの瞬間のために地獄のトレーニングを積んできたのだ。

優勝賞金は2000万円。タイの大卒初任給の30年分以上。ジムやプロモーターの取り分が半分としても、ブアカーオの人生を変えるに十分な額のお金である。魔娑斗を勝たせるために変えたルールによって最も進化したのはブアカーオであり、魔娑斗のダダによって倍額につり上がった賞金を手にしたのもブアカーオであった。歴史は時にこのような悪戯をする、だから歴史は面白い。

試合後、興奮して眠れなかったブアカーオはボーリングに出かけたという。そして翌日はマスコミ各社との記者会見やインタビューに忙殺される。もはや誰もブアカーオの実力を疑うものはいない。K-1主催者の息のかかったマスコミからは決して公言されることはないが、数々の逆境があったことは多少格闘技に興味のある者なら皆知っている。だからこそ、この勝利が燦然と美しく輝くのだ。前人未到のV2達成。他の追随を許さない圧倒的な実力。逆境をバネに進化する知力と精神力。この日、ブアカーオはナーイ・カノムトムになった。


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yoshi-HERO

yoshi-HERO
by yoshi-HERO (2006-07-06 02:00) 

you

こんにちは。
MAX私はテレビ観戦でしたが自分が試合する訳でもないのに前の日から緊張してました。
以前、佐藤選手もブアカーオ選手も好きですと言いましたが一回戦から佐藤vsブアカーオということでどうなるかハラハラしてました。でも今回、ブアカーオは違いましたね。まさかパンチ主体でくるとは思いませんでした。佐藤選手もまさかパンチでダウンとられるとは思ってなかったんでしょうね。佐藤選手の地獄のような練習は本人のブログから伝わってきましたがブアカーオ選手も相当辛い連絡してきたんでしょうね。
ブアカーオ選手の優勝は彼の努力の結果なんでしょうね。ルールを変えられて不利な状況になってももっと強くなって戻ってくる。勇気をもらえますねp(^-^)qブアカーオ選手には心からおめでとうを言いたいです。
佐藤選手ももっともっと強くなっていい顔して戻ってきてくれると思います。ダウンをとられてもまた立ち上がろうとする選手ですから!
by you (2006-07-06 08:53) 

scot

決勝はサワーはルールの変更に適応できず、逆にブアカーオは、ルールの
変更にしっかり対応してきたのが勝負の分かれ目だったように思います。

しかしながら、見ごたえのある決勝戦でした。
もう1度、2人とも万全の体調での再戦が観たい!
by scot (2006-07-06 16:45) 

○

格闘王、今週はブアカオ特集でした
http://www7.spread-it.com/dl.php?id=aac99505a5f5c6e397b1b6266cd9c48300195d5a
by ○ (2006-07-06 22:20) 

Bacupile

 感動ですね><!
by Bacupile (2006-07-06 23:24) 

しょちょう

yoshi-HEROさん
現代の信長になってください。期待してますよ!!

youさん
佐藤選手もブアカーオ選手も同じくらい過酷な練習をしてきたのだと思います。ただ決定的に異なっていたのは、作戦においてブアカーオのほうが遥かに上を行っていたということです。今回の佐藤選手は明らかに作戦負けです。両者の実力がきちんと噛み合えば間違いなく3R判定決着だったでしょう。そして40%くらいの確率で佐藤選手に勝機があった。でもあれだけブアカーオに裏をかかれてしまっては勝機はゼロです。
でも佐藤選手のことですからきっと復活して、ブアとの再戦までこぎつけるでしょう。そして次こそは世界最高峰の攻防を見せてくれることでしょう。期待しましょう。

scotさん
次に両者が闘うときはもっと接戦になるでしょう。佐藤選手も頭のいい人です。次はブアカーオも驚くほどの成長をしてくることでしょう。楽しみです。

Oさん
もちろん夜中まで起きてその番組を見ましたよ。ビデオにも録画しましたし。最高です、ブアカーオ!

Bacupileさん
Bacupileさんも見ましたか、あのトーナメント?本当に感動的でした。今後もブアカーオの応援おねがいします。
by しょちょう (2006-07-07 23:37) 

Bacupile

もちろんですよ^^
by Bacupile (2006-07-08 12:00) 

しょちょう

嬉しいです!
by しょちょう (2006-07-09 18:55) 

you

そうですね!次はこそは!佐藤選手、期待してます。
でもブアカーオの優勝は本当に嬉しく思います(*^^*)
by you (2006-07-10 22:08) 

しょちょう

youさん
期待しましょう。できれば佐藤とブアはワンマッチかトーナメントの決勝でやってもらいたいです。お互い潰しあって最後はプロテクトのかかった魔娑斗に判定負けというのでは目も当てられません。
by しょちょう (2006-07-11 23:58) 

ぼたン

ブアカーオ強かったですねぇ・・・
佐藤の前蹴りが全て持たれてしまっていたのには驚きました。
今回みたいにパンチで相手を倒すことも出来れば、ザンビディス戦のようにキックで完封することもできる、完全なコンプリートファイターになりつつあるような気がします。

それにしても、ガオグライもそうですけどブアカーオは好感が持てますね^^
謙虚だし、純朴だし。笑
大会終了後に、好きなタイプの女性や日本人の女性について質問されると、
「僕にはまだわかりません・・・」と顔を真っ赤にして答えていたそうです。笑
by ぼたン (2006-07-13 01:18) 

ニコちゃん

こんにちわ
地黒なのに、顔を真っ赤にして・・って可愛い!(^▽^
それどこでみたんですか?
でもしょちょうさんのおっしゃっていた
「ラウンドガールと踊り狂う」という一面もあるようで、
タイの男性ってわからないですね・・・・
そのへん、しょちょうさんの分析をゼヒ聞いてみたいです!
by ニコちゃん (2006-07-14 09:33) 

Traveler-S

以前からブログ楽しく拝見しています。
今回のK-1を見逃して、非常に悔しく思っています。
しかも、ブアカーオが優勝・・・!最高ですね!
見なかったことを本当に後悔しています。
前回のガオグライの試合とか他の試合見てから、なんかK-1見る気が失せて、試合予定チェックしてなかったんですよ・・・
ブアカーオの優勝は、本当に心から喜べました!
by Traveler-S (2006-07-15 12:48) 

しょちょう

ぼたんさん
まさにコンプリートですね。アーネスト・ホーストもかつてブアカーオをそう評しておりました。
ブアカーオはけっこうお茶目な人なのではないかと推測しております。基本的にムエタイ一筋の田舎のタイ人青年なので、純朴なのでしょう。これからも応援しましょう。

ニコちゃんさん
かわいいですね。ブアカーオ本人と会ったことがないので、分析できないのですが、上に書いたように純朴な田舎の青年なのでしょうね。これからもよろしくおねがいします。

Travelersさん
僕もヘビー級は見るのをやめましたよ。でもブアカーオが出ている限りMAXは見ると思います。ぜひブアカーオ応援してあげてください。ガオグライもよろしくお願いします。
by しょちょう (2006-07-15 17:32) 

ヒロヤちゃん

 ポー・プラムックジムはボクシングもやってましたよね?ボクシング雑誌で世界ランカーの欄で下が同じ名前を読んだので・・・。
 ここまで来たらK-1は彼らを受け入れるしかないでしょう。長い目で見れば質が上がるし、いい選手も育つはずだから。ただ、ターザン山本の弟子にそれができるかどうか・・・。
 マサトくんは努力家だから、いっそブアと合宿したほうが強くなれるのでは?
by ヒロヤちゃん (2006-08-05 17:42) 

しょちょう

ヒロヤさん
マサトくんは今日のブアカーオを見てますます自分とのレベルの差を感じたのではないでしょうかね?引退は近いかもしれませんよ。
by しょちょう (2006-09-05 02:17) 

ぽにぽにだっしゅ

ボクシングとかの見すぎじゃないですかねぇ・・
k-1は他の格闘技に比べたら基本的に、地元判定や八百長は少ないですよ
ただの興行ですから、八百長はそのまま客足に響きますし
巨大資本(創価)がバックについてるとはいえ、全国放送がありますから
やりたい放題ってわけにもいきませんよ
興行主は誰が勝とうが、評判を落とす事を一番嫌いますから
ある意味、一番やりにくかったりするんですよ

もし八百長なら、亀田みたいに試合内容関係なく
最初から判定負けにしてしまえばいいわけですし
by ぽにぽにだっしゅ (2006-10-03 04:19) 

しょちょう

ぽにぽにだっしゅさん
ご意見の意味がよく分からないので教えていただきたいのですが・・・

>ただの興行ですから、八百長はそのまま客足に響きますし
>巨大資本(創価)がバックについてるとはいえ、全国放送がありますから
>興行主は誰が勝とうが、評判を落とす事を一番嫌いますから

これすべてボクシングにも当てはまることではないかと思えるのですが、違うでしょうか?

>k-1は他の格闘技に比べたら基本的に、地元判定や八百長は少ないですよ

他の格闘技というのが何を指しているかによってここの真偽は変わってきますが、2004年のK-1 MAX決勝ブアカーオvs魔娑斗の試合は地元判定(=八百長)以外の何物でもありません。K-1自体もそのことを認めています。K-1で地元判定が少ないという根拠を明確に示してください。
by しょちょう (2006-10-05 00:30) 

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